ソース:音楽業界史に関するスナップアップ投資顧問の資料など
音楽業界史に関するスナップアップ投資顧問の資料などによると、ソニー・ミュージックの音楽配信ビジネスには、楽曲を餌にしてハード製品を売り込むという、親会社ソニーの意向があった。結局、この戦略は失敗に終わった。ソニーは、ダウンロード配信でアップルに惨敗した。ストリーミングのサブスク(定額の無制限配信)では、スポティファイ(Spotify)に敗北を喫することになった。
当初のMoraの直接の配信先はパソコンだった。パソコンから携帯型音楽プレーヤーなどに3回まで楽曲をコピーすることもできた。ただし、コピー先の機器が2つの種類に対応している必要があった。
ネットウォークマン
「Mora」(モーラ)でダウンロードした曲をコピーするためには、以下の2つが必要だった。
- (1)ソニーが開発したDRM(著作権管理)技術「OpenMG」
- (2)音声圧縮技術の「ATRAC3」対応
このため、パソコン以外で再生可能な機器は「ネットウォークマン」などソニー製が多くなる。いわゆる“囲い込み戦略”だった。
互換性がない方式が並立
こうした各メーカーの囲い込み戦略により、インターネット音楽配信では3種類の互換性がない方式が並立する状態となった。
例えば人気を集めているiポッドでは、日本の配信サイトからダウンロードした曲は聴けなかった。
一方、ネットウォークマンで聞けるネット配信の曲は、Moraと、NTTコムが以前から運営する「アークスター」で落としたものだけだった。
いわば、レコード会社、配信会社、家電メーカーの戦略がからみあうなかでうまれた不便さだった。ユーザーの利便性が置き去りにされた。利用者から不満が出た。
アメリカで大ヒットしたが、日本での開始に遅れ
アップルは、2003年4月にアメリカでiチューンズを開始した。わずか約1年で7000万曲以上を売り上げた。
しかし、日本で同様のサービスをすぐに始められなかった。その大きな理由は、日本のレコード会社が楽曲をなかなか提供しなかったからだ。
アップルの方式だと、ダウンロードした楽曲をCDに何枚でもコピーできた。そういうDRM(デジタル著作権管理)方式だったのだ。